シンバルが、鳴りつづけている
サルスベリの木の下で。
蟻が、そして蝶の死骸が、
生きるためにあがいたあとで
運命をしったのなら、
私の頭のなかの
鳴りつづけるシンバルの音を
どうか止めてくれ。
あの魂の叫びさえ聴こえなくなる、
やかましい、ジャンジャンなるシンバルの音を。
戦うことが大切だろう、
という自覚だけはレンガの胸に
囲いながら
それさえ破壊できる砲弾をかくし持ちながら、
満面の笑みでコミュニティを
築きあげてきた平和を呼ぶ風の音が聞こえる、
クソみたいな
嘘にまみれた。
さなか、
ちゃんと歩けるから
ゆくべき道をゆく。
運命に毒づいた。
夕日に染まり、
もう疲れたよとベッドにダイブする。
枕にすがり、
いまにもこぼれそうな涙を浮かべて
みかづきに喉を刺された今宵。
みんなサルスベリの木の下で。
やっぱりそれは
無数の蟻が綺麗な蝶の翅を餌として
捕食者の傲岸で無力な哀しみを
恥ずかしげもなく垂れ流すのなら、
ガレージのなかで
秘密基地を作っている少年の心の闇を、
みんな知ってしまうのか、
あるいは
知っているつもりに
なるのか。
さぁ、知らない。
そんなものさえ
そんなものさとわきまえた
静かな、静かな、『我が闘争』は、
むかしがたりの夢をかき消すだろう。
サマータイムブルースのけだるい歌声も
地平線の果ての届かない夢だから
そっと消されるだろう。
もういつだって終わってしまっていい
人生を蹂躙する
けたたましいシンバルの音で。
そのシンバルの音こそが、
私じしんの、言葉にできない殺意なの、
かもしれない。
そうじゃないの、
かもしれない。
あゝ、五月蝿い。
五月蝿いんだ、シンバルの音が。
止める方法は、ほんとうに
ここには、ないというのか。
さぁ?
ほんとうに、知らないんだよ?