ポエム
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蛇の詩人になりたい、というわけでもない

ああ、そうか。
蛇の詩を、しばらく書いていない。

あんなに蛇の目が
好きだったのに。
そして、その好きが、
変わったわけでもないくせに。

ほんとうに
ひと月以上も、
蛇の詩(うた)を書いていない。

ステキな午後を過ごす
国道のあの橋のそばの
喫茶店で、
ひとりで
スマホを見ながら
窓からは冬の海が見える席に座る。

海にさす昼過ぎの
煌めく陽射しが深い紺色の海に乱反射し
ちょっと眩しいくらい。

その好きな時間を過ごしながら
空に浮かんでいる
想像上の生き物を見て驚く。

初めて見るけど
あれが
ドラゴン、って生き物
(ま、ほんとうに生きてるわけではないけど)
なんだ。

あれ?
でも、この詩って、
蛇を書く詩なんじゃなかったっけ?

て、
もう一度ちゃんとそのドラゴンを見ると

なるほど、手足はなく、
翼だけを羽ばたかせて
中空を飛んでいるようだ

細ーい、蛇のような
(だって、蛇、だから!)
体を中空でこれは、よこではなく
縦にニョロニョロしながら、
バッサバッサと飛んでいるんだよ。

ああ、その幻影が
私がかつて見た
青春の虹の架け橋へ向かって
昇ってゆき
そして見えなくなるあいだ、
喫茶店のコーヒーがまだ
冷めていないそんな、
短い時間で消えてゆくんだ。


蛇の詩を書こうとしたからかな、
でも、ほんとうに私には
蛇のような生き物が
この喫茶店のいつもの席から
よく見えたんだ。

そして、
その光景を、
このスマホで
撮影するんじゃなくて、
その幻影を、
このスマホで
書き残すんだ、
だって、私、
詩人のはしくれだから、ね。

と、かるく啖呵を切ったところで、

そうだ、
これで、
今日の蛇の詩(うた)のおわりとしようか。





20/03/24 01:16更新 / 花澤悠



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