なみだ抄
きみはときおり
泣きだしてしまうね……
かなたの朝の虹を
ながいあいだ眺めては
消えていくのを待って
どんなさわやかな風も
去っていくのを待って
ふりかえったきみの
瞳にはなみだが浮かんでいたが、
海のなかの魚のよう……
すこしなみだがみえづらかった……
指で拭ってあげるとき
ふと、
ぼくのせいなのか
かんがえてしまった……
ぼくをみる目はあたたかいけれど
夜の砂漠で北極星をさがす
詩人の目にも似ていて
それであわてて
くちづけをした
なみだのわけを
きくのが怖くて
あと
寂しいことを
言ってしまいそうで
真っ正面から瞳をみつめなおし
きみのまっとうな生き方を
そっと、見守っていてあげたい
のに、どうしてだろう
きみは、いま、
まるで孤りに怯える少女のように、
ちいさく、
しゃくりあげている……