くちづけ
はるかなかなたの夜の虹を
ながいあいだ眺めては
つまらない
日常からは逃げだしたいと
ふりかえった君の
瞳に浮かんだ色は
透明な水の色だった
すこしだけ
温かかった
指で拭うときふと
むかしの人のことを
流れる水の中で思いだしているのか
僕をみる目はとけて
真っ白なチーズのような柔らかさ
それでもくちづけをしたかった
夜の静寂
のなか
君の
ひとみのなかの悲しみを
そっと吸いだしてあげたかった
20/02/17 21:59更新 / 花澤悠
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