だまされたくない
もしも、
ああ、もしも、ね
もしも願いが叶うなら
もしも、
ああ、
もしも許されるのなら、
今年のうちに
すべてを忘れてしまいたい
古い記憶から
あの日の寝室の記憶まで
すべての忘れられない
風景を。
あの、
幸せな温もりにくるまれていた
春の夜の寝室も、
言葉でお互い古傷を抉りあった
あの、
憎しみさえすり減らした
いちねんの最後の夜を終えて
リビングのソファーで寝た
心が凍った明け方も
なにが、
あけまして、なのか、
なにが、
おめでとう、なのか、
ふざけてんじゃねぇよ
と
頭の中まで
チクチクして痛んだ
新しいあしたを迎えたテレビのまえ
あの、
明け方も。
ああ、
もしも許されるのなら、
今すぐにでも、
すべてを忘れてしまいたい
ああ、
いちねんは、また、
もうすぐ、終わるだろう
けれど
もうすぐ、
すべてを隠す
すべてを、真白に、埋め尽くす、
もうすぐ雪が降ってくる
そして雪は降り積もる
そして、それに、だまされる
その、
哀しく、美しい、偽りに。