ポエム
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冷たい月が綺麗なその夜

その月の冷たさが
高い空から降りそそぎ
手をつないでいた
その夜は、
君も凍っていた、

孤独な氷は、
音もなく瞳のはしから
ひとすじあふれ出して、
流れ落ちたね。


やわらかい赤色の唇が、
吐息まじりに名前を呼ぶのは
生きる意味に等しい
愛しい君へのあの夜からの想いが、
恋を失うという
ほんとうみたいな嘘を
さんざん舐めつくしたあとだから、

そんな傷だらけの嘘つきだから、
いつも、凍った浴槽で
涙を流している。

そこにあるのは
後悔や諦めなどではなく
全身を絡めとられる
優しく暖かい嘘つきを
信じてしまったという、
そんな嘘に
溺れてしまったという、

心の痛みだけなのだと
気づいてしまった。

初雪のふるえを呼ぶ
寒い寒い
嘘に、
縛られてしまった夜

心の夜が
いつまでたっても
深い闇堕ちのうたをうたうから

僕は君とふたりきり
凍えながら公園のベンチで
その月が綺麗な理由を
いつまでも語り明かす、夢を見た

なにものにも
傷つけられることのない
青い月の光のもとで
いつまでも、いつまでも

そんな夢のような、夢のなか






19/12/21 07:14更新 / 花澤悠



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