冬の獣
独りでいる
冷たい部屋の板の間で
ニャ、と小さく鳴く
猫も寒いのだろう
ぼくたちの
朝はいつまでも
明るくはならないままで
口の中は
鉄の味がするままで
ふと気がつくと
鉄の涙を流していたりする
板の間に
置かれた畳に座り込んで
猫を抱きしめている
嫌がられながら
そして寝転ぶんだ
重力に負けて
ヒゲもたれ気味だし
朝日がいま
ようやく
カーテンを鮮やかな
オーロラみたいに揺らして
この猫を
放り出すほどの純粋な怒りもなく
すこし軽めのウインクをするだけ
ヒゲは触ると怒るけど
ちょっと野生が目覚めるみたいな
牙も剥く
冬のバルコニーに
雪のふりした花が咲き
この部屋からもう
サラバといってみたいけど
そこに猫がいるだけで
獣の声で泣きたくなるんだ