ポエム
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あのひと、初恋、くちびる、黒髪
くちびるにそっと
触れた
くちびる
消えない、初めての想い出

たのんでも
ないんだけど
森の奥の泉で冷やしたみたいな
新鮮な野菜の感じで
空気がながれるのなら

いままでの
いつわりで
あたたかそうななこの胸は
この冬
すっかり凍ってしまい
白い空もひび割れて
しまったみたい

それもしようがないや、

なんねんねむりつづけていたよ?

黒髪を凍らせて
冬の大気は、
地表まで
降りてきてしまったのか

はじめてのとまどい
忘れられない、裸をみせた夜
まよなかの湖に
うかぶ乳房をみせた、
深い気怠さ


どれほど鏡のなかを探し見ても
そのようにして、
過去の美しい牡丹雪は
血をにじませながら、降り過ぎていって

想い出す私は
この部屋に白銀の息を吐く

心を凍らせた、壊れかけの日常に
戻るすべもだれにも教えてもらえず
突き刺さった一つ星に
だから痛みも感じないで
ニルヴァーナの海にさすらい、
ただ揺蕩っている

甘い香りのする
この浴槽で

その、初めてそっと触れた
くちびるを想い出して
甘い香りを消さない
この浴槽で
洗った
くちびる
消えない、初めての恋の風

あのひと、初恋、くちびる、黒髪、

そんなのばかり
想い出すのは
あの匂いが、近いせいかしら?





20/02/26 05:02更新 / 花澤悠



談話室



■作者メッセージ
久しぶりに読み返してみたら、ちょっとだけ触りたくなってしまい、触った。タイトルの、聖夜、を、あのひと、にしたのと、ラスト、聖夜が近い、というのを、あの匂いが、ってのに変えた。あと、最後の方の、「その、初めてそっと触れた」は、もともと「それを初めてそっと触れた」だったのを手直しした。
とりあえず、記しておきます。って、あっ、夜中(ちゃうで、朝やで)の、5時だ。

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