だれを欺くプロジェクト
天国の扉を
ちからわざでこじ開け
天に向けた糸電話で
糸のような月を
吸い取ろうとする企みがあります。
けいわいプロジェクトと
青空には書いていますが、
信じられない下手な
魚が泳いでいるような字です。
文字は私にしか読めません。
私にしか読めないのも
ちゃんと理由があって
根こそぎ
夢物語だから。
悲しみ。
まぎらわすための、
優しい。
私だけのための、
「あなたにしか読めなければ
あなただけのための
ラブレターになるでしょう?」
青空に誰も読めない下手な
そのサインの出た夜に、
糸のような月が
私だけのものになるとき、
雲の上にいる彼女の
あの蕩けるハチミツのような声が
私にもう一度届く夢が叶うという、
《叶え、夢》プロジェクト、とか
それで、頭文字を取って
けいわいプロジェクト、とか
名づけたのは、彼女です。
自分には
生前に罪がなく
雲の上にいることが
大前提の自信とか、
自分の声を
蕩けるハチミツのような
とか喩えていた真顔とか、
いかにもな、彼女っぷりでした。
空にいらっしゃる神さまに
「その夢 叶えて いただけなければ
月はお返し 出来ませんよ」
そう
取り引きしてくださいね、と
教えてくれたのも彼女です
その企みが成功しないなら
私が彼女のあとを追うんじゃなく
彼女の分も生きてくださいね、と
なかば強制的に
頼まれたんだけど
それ、決めるのは私です。
でも、彼女、ズル賢いとこあったから
なんか私が簡単に死ねないトラップ
仕掛けてる気がするな
まぁ、それ、決めるのは
あくまでも私なんですけどね。
で、当日、夢物語の夢叶って
彼女の声が届いたのはいいんだけど
「逢えて良かったね、
また来年も逢おうね。」
ちょっと待って、それじゃあ、私、
そっち、行けない。
「でも、あなた、絶対に
雲の上に来る自信ある?」
あゝ、そおか、行けないなら
死ぬまでは
一年に一度でも
こうして彼女の声を聴けるほうが
いいということか?
で、私は死ねません。
と?
キッタネー。
ね、言ったでしょ?
ズル賢いとこ、あるって。
まぁ、
あくまでも決めるのは
私なんですけどね、
でも、二度と逢えなくなるのは
絶対イヤだから
けっきょく生きていってしまうのかも?
だから
けっきょくこのプロジェクトって
私を生かそうとする
プロジェクトだったわけ?
彼女の夢は、
私が生き続けることだったってわけ?
なんだかなー。