ほんとうは、あの人のあとを追いたかった。こんなことになるくらいなら。
純情な真っ白な花を飾ろう。
もう僕の純情は、
あの夜の街の片隅に
はき散らかしてきてしまったものだから。
この部屋はひとりだから、笑うのも泣くのも自由だ。
それがよくて、いまだに住んでいる。
何につまずいてしまったのかわからないけれど、
僕は未だにひとりっきりでいる。
この部屋で、暗い鏡をじっと眺めていたりする。
汚してしまった心粉々に、
どうなったっていいやって、
自分で暴れて、自分を棄てて、
どこのどいつだろうがこの僕を
助けてくれることなんかできやしないんだから。
たま〜に、うれしいことがあったりすると、
ユニットバスで、ぬるめのシャワーを浴びながら、
小さな声で歌歌い、ひとりにやにやしてたりする。
それくらいかなぁ、快感。
だからごくたまに、
真っ白い花を自分のために買ってきて
青い陶器の花瓶に飾ったりする。
その花瓶はあの人が残していったものだし、
花飾る習慣なんて、あの人の、ただの真似だよ。
何か美しいものが、この部屋にあることが、
少しだけ心を落ちつかせてくれるから。
美しいといえば、想い出すのは、
まず第一に、あの人のことだろう。
だから、僕はこの部屋に、
まっ白な純情な花を飾ろう。
もう僕の心には帰ってこない、
だから尚更愛おしい、まっ白な純情のかわりに。