『ただれる月夜』『苦い月』
『ただれる月夜』
松川の
駅に到着した方の
きらめく白刃陽光を受け
変わらない
昔を思い出す癖は
スプーンを使って流し込むだけ
次の人
捜す力も気もなくて
悪人だと知るただれる月夜に
年を知り
冷たい風と恋をして
悲鳴のような喘ぎを聴こうか
『苦い月』
罪を知り
なぜと問われる苛立ちに
殺してくれよとあかね空みて
苦い月、叶う夢などない夜は
コオロギがなく
河べり小道
青い月、あの頃の夢忘れ去り
逆さに震える
真実の人
人ひとり
歩き歩きで気がつけば
ひとりになって
泣いた鬼いて
叫び出す
あるいは未来を殺す眼で
白刃かざして泣かない誓いか