ポエム
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残り香


 

白い壁しかみえなかった
蒼ざめた心の時代

なにもかもに手が届かず
なにもかもをいらないと口笛吹いてた

夜よりも明るい闇が
家の池に一本咲いたとき

夜よりもさみしい時間が
突然目のまえに現れた気がしたキツい一撃

だれにもまして
生きてゆける自由を
コソコソとしないことだと勘違いした僕は
ただ好きなあのひとのことを
目のまえで好きですという勇気だけを
たもつことだけに必死な冒険者だった

いつも微笑みかけてくれてた
丁寧に優しくありえることを教えてくれた

はみだすことがけしてダメではないとも

白い壁しかみえなかった
蒼ざめた心の時代

灼ける想いと
強い優しさと
だれにも掴まらない
過敏なほどの敏捷を得意げに披露していた
僕は
けっきょくは
あのひとのオモワレビトにはなれなかった

ねぇ
それをもって青の時代の終焉と
だれもがそう呼んでもよいのなら

突然消えてしまったあのひとの
微笑みだけでもいい
許してくれなくてもよいけれども

綺麗な声で
僕の昔のあざなを呼んでよ?

夜だけが
新しく
夜なのに
暖かかった
あんな時代の残り香を添えて






25/04/18 19:49更新 / 花澤悠



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