あたしが握りそこねた満月
触れた手が
痛い位に冷えていく
夜の顔をしたナイフを棄て去る
手離せない夢を棄てても一つだけ
手にした玉(ぎょく)を握ったあの夜
ないている
冷たい涙も流さずに
コオロギ一匹ただ秋だから
静かな夜
魔女が箒で飛びそうな
「月とナイフとコオロギ」な、夜
その人に
忘れられたら生きている
意味ないほどの愛って、ダメだね
辛すぎる
からすぎじゃないよ、つらすぎる
痛い愛なら、まだマシなほど
あたしって
魔女と呼ばれたこともある
冷たく見えるお顔のせいかな?
馬鹿だけど
ただひたすらに君のこと
好きってのたまう、ほんと、大馬鹿
馬鹿だけど
雨雲の上ひとり待つ
龍が握った玉(ぎょく)みたいなヤツ
ひたすらに
眺めているのは満月で
かつて握った夢に似ている
別れの日
見上げていたのは美しい
夜が握りたがるほどの月
あたしが握りそこねた
満月