テレビで八雲町の木彫りの熊をみて
八雲町の木彫りの熊は
なんだか温かみがあって
理由がちゃんとあるんだ
昭和初期から
フルートを吹いたり
バットを構えたり
そんな可愛い感じの熊ばかりで
鮭を咥えた熊は
いっぴきもいないらしい
流れる川の
朗読するような水の音が好きだ
心が涼しくなる
魔法をかけてくれるから
山頂には展望台なんてなくて
ただそのしたにある渓谷が
圧倒的に胸をしめつけようとする
来てよかったなぁ、って想える
あまりの自然の大きさに
山の緑に吸い込まれそうになったり
空の青に溶け込みそうになったりする
そう云えば、鹿をみた
舗装された車道に
なにに怯えることもなく
真横を向けて立ち止まり
車の通行を禁止するかのように
ゆっくりと視線をこちらに向ける
なにか神々しいものに
睨まれているかのような
まるで地の底に連れて行かれるかのような
恐怖が心臓をつかむ
恐怖がこの先もつづくんじゃないかと
想ってしまったんだ
けれど大丈夫、これからは
そんなときはテレビでみた
八雲町の木彫りの熊を
軽く想い出すだけで
なんだかホッとするだろう
週末三連休前
体の調子が良くなく
楽しみな彼女とのお出掛けを
断腸の想いでキャンセルした
そんなときはテレビでみた
八雲町の木彫りの熊を
軽く想い出すだけで
なんだかホッとする
金曜日の朝
そんなことを想いながら
なにかを紛らわせるじぶんの顔が
鏡に映る