十字架
どこにも、辿り着けなかった
後悔のなかの幸せが
ひとかけらの希望のために
夜空にキラリと十字に光る
星々が、鮮やかに視えるのに
小雨が降って来て
夜空をみあげてる僕の顔を
ゆっくりと濡らしてゆく
僕には、帰り着く場所もなく
秋の枯葉の舞い落ちるまえに
ゆきたい広場があるだけだ
見も知らないちいさな町へ
どこか遠くの異国へ
かなたの向こうの最果てへ
いってみたいと、希むのではなく
磨りガラスごしにみあげる
晩夏の星々がなんだかぼやけているのは
僕が、煌めく朝日のことを
待っている疾しさのせいなんだ
じぶんじしんに、そう云いきかせて
よるべなき、ガラクタの心に蓋をして
胸の十字架を硬く硬くギュッと握りしめる
てのひらを刺し、血を流すほど冷たい