彼女のうた
言葉と
こころと
立ち居振る舞いと
その存在を
嘲笑われた彼女は
ふと、ふるさとに帰りたいなぁ、
なんて凄く間違って想ってしまった
彼女こそあたりまえのように正しい
それを云うと
いつも彼女は
そんなわけないだろ、と
僕を睨みつけながら口をとがらせていた
すこし休んだほうがいい
折り曲げられたつみびとと断罪された
僕の彼女は
汚れてしまった悲しみに
気づかずに浴槽で眠ってゆく
額にはうっすらと汗を浮かべ
すべてを理解したあとに
なにもかも忘れてしまうほど
切ない経験を
焼き尽くすことはやはりできずに
ただただ今日の疲れを癒やすためにと
じぶんに騙されながら
心地よい浴槽で眠ってゆく
夢の中で
畑仕事をしている歩調で
歩いているのだろうか
すこし満足げな笑みが
うっすらと浮かんでいる
そんな彼女に捧げるように
僕はいきなりこんなことを想う
僕は生きることを
これから諦めることだけは
してはいけないと
僕なんかにできることといえば
目を逸らさずにみていてあげることだけ
今夜は、熱い夜になりそうだ
そして軽く寝息を立てている彼女の細胞は
未来をみ据える僕のからたを捉え
そして彼女の影は
ゆらめく僕じしんの影でもあるのだから
汗が引かないほど熱い夏の夜なのに
絶望と希望の境い目がわからないだなんて
いったいどう応じればよいのだろう
彼女の心に最後に残った悪性一滴さえ
焼き尽くすための試練が訪れるかもしれない
そんな夜、
僕は眠り姫をこれ以上ないくらいやさしく
やさしくやさしくいだいて
お姫様抱っこで
寝室までお連れする従者のつもりだ
それでも
心に触れてはいけないだなんて
今夜は、長い夜になりそうだ