ひんやりとした夜を越えて
(短歌九首)
夜を待ちひんやりとした部屋にいて昔読んでた本を眺める
薔薇の葉を揺らす風には少しだけ時間が戻る魔法の鱗粉
夜気だけがゆっくり揺蕩うこの街の波の底にも流れる月光
まっすぐに吹く風のねを聴くのなら稚拙な夜を忘れてあげよう
朝を待ち駅の改札口で知るハートブレイクされた明るさ
うわの空だと想ってるじぶんでも二度と逢えない未来が怖くて
カレンダーなんてみたのは水曜の予定にバツを強めに描くため
時を経て全てを忘れてしまえると信じていたが全てを間違い
潮鳴りの寄せては返す轟きが止まない久遠の寂しい明け方