星
生まれ育った街は霧が深くて
冬ともなると10メートル先も
みえやしない歩けもしないほど
どこへゆくあてもなく
辿り着く場所も持たない僕には
いやべつに特になんでもないんだけどね
たまにはその霧の中にとても小さく
光が灯っているのがわかる
いやみえやしないただわかるんだ
地図なんて最初から持ってないし
関係ないくせに街を出られない理由を
地図をなくしたせいにする始末
霧の中にはひとりの人影もみえない
ただ君の笑顔だけはわかる
いやみえるんじゃないただわかるんだ
霧中に彷徨いながら駅へ向かう足は
途中で甘い香りに誘われて吸い寄せられる
ありきたりじゃない君の部屋へ向かう
わからないということをしっかりと
伝えないといつかわからないまま
なにも云えなくなってしまうんだと
知らなくても感じでわかるけど穏やかで
いいやべつに特にやりたいこともないし
ただ夜になれば星はみたいかな
いま住んでるこの街は闇が深くて
夜ともなると1メートル先も
みえやしない息も苦しいほど
どこへゆくあてもなくてもいいし
辿り着く場所も持たなくてもいいよ
いやべつに特になんでもないんだって
いつだって信じているこの街にはちょっと
だれも知らないちょっとした星がある
夜空にあるんじゃないこの街にある星だ
急にすみません僕は謝ることをしばらく
していなかったことに気づく
そして微笑むこともしばらく
していなかったって鏡をみてきっと気づく
屋根に登って星をみなくてもそうだこの街に
ひかりかがやくものがあるから星があるから