紅の風のうた
そうやってあたしたちは
その歌が聴こえてくるのを
信じて待っていた
今夜こそありがとうと云えるという
溶け始めたグラスの氷みたいな嘘を
溶かさないように気をつかいながら
だれもいない夜空に向かって
綺麗な風が吹く海辺の孤独から
聴こえない嗚咽がこぼれ出すから
堰を切ったように溢れ出した言葉を
ありもしないやさしさを込めて
サイコーの歌だって信じ切るのさ
嘘でもかまわないが嘘なんかじゃないって
今夜だけは見逃さないで
今夜だけは強くなって見栄を張って
なにもドラマなんかじゃないけど
大丈夫なんだって信じてる
少しあたたかいだけのキスもしたことだし
.
みていたあたしたちは
蘇るストーリーを読むように唇を読む
ほんとうの心はむろん読めやしない
遠い想い出というか過去の煌めきというか
愛おしいというか抱きしめたいというか
あたしたちはいつだって立ち止まらなかった
生きることに苦痛なんて伴わないと
あたしだけをみつめる瞳のなかの
静かな炎の色は熱いけどとても穏やかで
君だけをみつめているあたしの
おもわず吹き出しそうな笑い声みたいに
すこしアッチ系の愛情色を滲ませているんだ
この聴きとりにくい歌をヘタなコメディと
嘲笑って笑い飛ばしてくれてもいいけど
最後まであたしたちは紅の風だったよな