店
滝が有名な山があって
雪でも降りそうな空模様の
二月にその滝から流れる
ちいさな渓谷の
澄んだ川が眺められる
小洒落た店に入ったんだ
たとえば桜咲く春先だとか
たとえば紅葉に染まる秋だとかに
ゆけばもっと違った味になると想う
そんなコーヒーの味の店
とても寒いのが前提で
膝掛けなんかを
店で用意してくれている
そんな
二月にはちょっと寒すぎる店だった
外気が入ってくる隙間が
床の方に開いていて
夏ならその隙間から
自然の心地よい涼しさが入り込んで来て
そこまで歩いて来た汗がひくのも
体感できる
自然の涼を感じることができる
そんな店なんだろうな
そこははじめての山だから
ではなく
二月の曇りの昼間だったから
なぜだか
居心地が悪くなるほど
拒絶されている気になる店だった
たぶん私は
もっと暖かい気持ちになれる店を
期待していたのだろう
それに気づくことができたとき
なにも悪い店ではないんだ
求めているものが違うから
とても寒いんだと
その寒さが居心地悪くさせているんだと
川の流れをみながらそう想ったら
目の前の君が
「とても寒い店ね」
と云ってくれたから
私はその店に入って初めて
微笑むことができたんだ
「ほんと」