ポエム
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彼女のうた
 

いい詩が書きたいと想う
心から
心の奥底から
いい詩を書きたいと想う

冬の夜は
ほんの少しだけ
時間の流れを
感じられることがある

昨夜がそれだった

けっこう傷ついた体を休めて
暖房のよく効いた部屋で
彼女とふたり
よしなしごとをくっちゃべったりして
ふとふたり黙り込むと
時計の音だけ
カチッカチッって
正確に過ぎゆく時間を知らせてくれる
べつに沈黙が怖いわけでもないけれども
またどちらからともなく
くっだらない話を始めたりして
ふたりの間に揺蕩う空気が
なんだかやさしい気持ちにさせてくれて
わたしは
心の中のわたしに
そっと語りかけたりもする
やぁ
よく生きてきましたねぇ
だからこんなしあわせな時間を
過ごすことができるんですね
なにひとつ持たない
自由さえも手放して
ただ生きるために
生きてきた日々
やぁ
よく生きてきましたねぇ
よくやりましたよわたし



でもね

これは

慰めの言葉だよ




いい詩が書きたいと想い
心から
心の奥底から
いい詩を書きたいと想って
心の奥の奥の言葉を
紡ぎ出そうとすると

けれどもやっぱりそこには
すこしわたしを冷めた目でみている
わたしじしんのまなこがあるみたい

だからわたしは
彼女とふたりでこの部屋で暮らし
彼女とふたりで生きること一瞬一瞬を
とてもたいせつなものだと
想うんだ

たまにくだらないケンカをしても
たまにふたり泣きじゃくったりしても
それさえふたりで生きてることだから
彼女のことを想うと
寒風の中でもポカポカするし
彼女の肌に触れていると
世界に横たわった不幸や絶望
深い傷跡やどんなマイナスさえ
目をそむけずにみていられる
そして正しい判断をしたいと
深いところで想う
たとえば想うだけだとしても
そう
想えるんだ



いい詩が書きたいと想い
心から
心の奥底から
いい詩を書きたいと想ったので
彼女のことを考えて
書いてみました

たぶんこれがわたしに書ける
一番綺麗で
いい詩ですから






24/01/27 09:27更新 / 花澤悠



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