僕の生きる理由
その暖かい視線に驚いて振り返ると
君はその夜も凍りながら笑っていた
僕のために振り絞った笑顔
僕の心をじんわりと温めてくれる
溶けた氷は冷たく僕の瞳のはしから
ひとすじツーって流れ落ちたね
骨を削るほどに尖った鋭い孤独さえ
蕩けさせてくれる柔らかな肌
濃い赤色の唇が吐息を漏らすのは
しあわせという嘘を舐めつくしたあと
悲しみの日々に慣れてしまった君の
慰安の言葉は意地でも明るい声だったね
それで自分が嘘つきだからと
生きるのが楽しいひとに憧れると
云わなければならないと
いつも凍って泣いている夜の部屋で
うすら汚れたあの真実への憧憬を
もう一度だけでも取り戻すことができれば
しあわせに戻れるかもしれないという
大嘘に溺れっちまったみたいな凍える
凍える心を切り裂きたいが切り裂かない
君がいてくれるから生きられると
たったひとつの生存理由だけ照れながら
この心に刻みつけておけばいいそれでいい