満月
扉を開けて外に出る
東の国の上に
眩しいくらいの満月が
昇っていた
ので
すこしも寂しくなんかなかった
あの月の下には
どんな街があるのだろう
きっとやさしい言葉が流れる
あたたかい夜があるのだろう
静かに流れる月光の
すこしやすっぽい涙色の悲しみ
こちらの街には
そんなものも降りそそいでいますよ
悲しみを数えるのです
けれどそれはそんなに多くはなく
最後まで生きてゆく中では
すこしだけ目に染みる
小粒のスパイスなのかもしれないかな
歩きつづけると
すこしでも体があたたまる気がする
今夜はゆっくり眠れそうだ
すこやかに眠れそうな気がする
みおろせば川に浮かんで揺れている
満月のおかげかな