聖者と勇者とあたしの物語
北の街では記憶を消し去る
聖者が悲しみを消す努力をしている
南の島では真っ直ぐな瞳の勇者が
悲しみを刺し殺して旅に出ようとしている
さいわい愚者のあたしの足下には
朝日みたいな綺麗な宝物が埋まっている
白く煌めく世界にしょっちゅう
すき透る赤い花が咲くのはそのためだ
あすを目指し乱舞する蝶たちがそれぞれの
譲れない行き先を目指して向かう道がある
あたしはたいせつなあなたとふたり寄り添う
その温かさを失う予感が怖くて震えて
どこのだれもなにも悪くないとしても
真っ白な世界は悲しみに震えているから
栄達やまいに巻き込まれた人間たちは
幸せでは癒せない心を引きずって歩く
北の街では記憶を消し去る
魔法使いが悲しみを消す努力をしている
南の島では真っ直ぐな瞳の冒険者が
悲しみを刺し殺して旅に出ようとしている
あたしはひとりぼっちで此処にいて
足下のすき透る赤い花を愛でているよ
それがあたしたちパーティそれぞれの
成し遂げるべき聖戦だって知ってるからね