ポエム
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黄金の時間


  

この歳になって想うのは
昔大好きだった作家さんたちの
本が本棚に一冊も並んでいないなぁ

あ、私の部屋だけでなく
街の本屋さんの棚にも並んでいない

話は
めっちくちゃ面白くて
当時ベストセラーなんかになってたし
それこそその作家さんの本は
本屋さんにも全巻揃っていたようだったし
新刊はもちろん既刊も平台に積み重ねられ
それで
飛ぶように売れてたんだよ
ごたぶんに漏れずに私も大好きで
それらの本を読んで
その
心に入り込むストーリーに
その
体を震わすようなストーリーに
まるで私ひとりだけに語りかけてくれてる
と錯覚させるほどの語り口調に
登場人物が実在すると信じてしまったり
なんか
時代を一緒に生きた本たち、作家さんたち
と云う気がする

驚くべきことに
あのクオリティーをほぼ下げずに
何十冊と書きなぐったあの作家たちの
《名作》たちは
今はどこにもみえない

めったにないことだか、
彼らの本を古本屋さんでみつけると
とてもほんわかとした
嬉しい気分になれるのもほんとうだ

時のすぎゆく早さの残酷さに
泣き笑いみたいな微妙な顔を曝け出して

でも
怖いのですよ

あのころあれほど熱中した
きっとこの作者さんは自分のことをしってて
自分のためにこの本を書いていてくれている

本気の本気で、
そんな風に想ったこともあった

たしかに私の心に入り込んだ作家さん
たしかに私の体に入り込んだ作家さん
私ひとりのため書いてくれてた作家さん

黄金色に輝いていた日々

私にとってのあのころはもう戻らない

マンガ「栄光なき天才たち」で
大人気流行作家の島田清次郎の
人生を扱っていたけど、
あのマンガでやってなきゃ、
私はしらなかった。
ずいぶんと昔の作家さんなんで。

でも大正期最大のベストセラー作家だったらしいよ。

けれど、忘れ去られる。

ちなみにそのマンガ「栄光なき天才たち」も
忘れ去られて、だれも知らない

時の流れがダイヤモンドだと
歌った歌手がかつていたけど
老いさせるだけでなく
忘れ去る罪も
時は犯している


私は、
少なとも3人のベストセラー作家が
本当に大好きだったが、
いまや、

どの本屋さんにもほとんど置いていない。

ただ
あの頃に味わった黄金の時間だけは
とても大切な想い出として
それこそ
私じしんが忘れ去るまで
私の心に
ポッとあたたかな灯を
ともしつづけてくれている

から
時の流れも
寂しいだけじゃない

寂しいだけ
じゃ、
なければいいよなぁ。






23/11/09 07:43更新 / 花澤悠



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