聖戦
北の街では記憶を消し去る
魔法使いが悲しみを消す努力をしている
南の島では真っ直ぐな瞳の冒険者が
悲しみを刺し殺して旅に出ようとしている
さいわいあたしの足下には
望月みたいな綺麗な宝物が埋まっている
白い世界の終わりにしょっちゅう
小さな白い花が咲くのはそのためだ
あすを目指す蝶たちが
乱れ飛ぶ桃源郷だ
あたしはあなたとふたり寄り添う
その温かさを失う予感が怖くて震えて
だれもなにも悪くないとしても
世界は悲しみに震えているから
やまいに巻き込まれた人間たちは
癒せない心を引きずって歩く
あたし
ちっとも
悲しくなんてないや
なぁーんて
ミエミエの強がりを云いたいけど
それさえ暗闇に吸い込まれるくらいには
悲しくて
ひとりじゃ
寂しい
北の街では記憶を消し去る
魔法使いが悲しみを消す努力をしている
南の島では真っ直ぐな瞳の冒険者が
悲しみを刺し殺して旅に出ようとしている
あたしはひとりぼっちで此処にいて
足下の小さな白い花を愛でているよ
それがあたしたちの
成し遂げるべき聖戦だって知ってるからね