あの女の美しさ
もし僕が
あの女のそばにいられるものならば
なぜ
世界一でなくてはいけないのかと
尋ねたい
あの女と白い雪の姫は
おそらく
血が繋がっていない親子なんだろうけど
そんなの
関係なく
人は、産まれ、
人は、育ち、
人は、変わり、
人は、老いる。
その、
老いることが《美》を
損ねることになるなんて
断ずるなんて
やっぱ鏡は、
ただの無機物だよ?
そんな鏡の
断ずる審美に
なんの
価値があるのかと
僕は、
問いたい、のです。
その女が
白い雪の姫を
嫌うのは
実は、その姫が
《美しい》からじゃないでしょう?
ただその
《若さ》が、眩しい、のでしょう?
人は、
いずれは、
かならず、
《老いる》
のに。
その、
現実を
《殺》したかったんでしょう?
ほんとうは。
ナイフで、
叩き割りたかったんでしょう?
鏡、を。
鏡よ、鏡。ホントのことを
云っても、良いよ?
人は、かならず、老いる、のです。
その、老い、の、
境界線が、
今日なのです。
だから、
かの姫に、
その姫の若さに、
今日、
負けたのです。
そうして、だから、僕は、
その女の悲しみに
心をすり寄せて、しまうのだ
だって、その
白い雪の姫も、
いつか灰色になったり
漆黒になったり
するかもしれない
いまの姫なんて
ただの
なにも知らない
なにも、していない
だから白いだけの
ヤツなんだから。
僕はいっそ、
その女のその悲しみを
少しでも
ほんの
たった、少しだけでも
僕のくちびるで、
吸いあげてあげたいと
想うのだ。
漆黒の、
女よ。
僕の目には君の
悲しいほどの、気高さしか視えない
そんな、君を、さ。
ねぇ、
漆黒の、
女よ。
好きに、なっては、いけないかい?