ちょっとした種の話
アイサイトがあるから
事故が防げる
のなら
くるまにはアイサイトが
あった方がいい
ちいさな種を植えたら
家族になれる
のなら
ふたりでちいさな種を
植えた方がいい
土を掘って
掘って
掘って
掘り尽くしたら
そこにはなんの種が
埋まっているのだろう
曇ってしまった季節のかたわらに
あのときくるまで行った
小高い丘の上で
薔薇色の夢の話をしたね
盛りだくさんな幸せの種の話
(いつのまにこんな風に
想い出の中の風景になったのか)
日々水をやりつづけても
芽吹かない種もある
その水が悲しみだというなら
なおさらだ
青空を目指して
伸びてゆきたかった
悲しみも諍いも争いもない
まったりとしたしあわせ色の
明るい陽光を
目指し
それでそれが無理だと
想ってしまった季節に
ゆく道ゆく道で
無言で突っ立つ黒い影に遭う
目をそむけて
手が届かない
幻の白い花を探し求めている
アイサイトがあるから
事故が防げる
のなら
くるまにはアイサイトが
あった方がいい
それが一番簡単な話だと想う
あのとき丘の上からみおろした街が
なんていう街だったかは
今はもう憶えていない
ただふと最近になって
もう一度あの街へゆきたいと
希ってしまうじぶんがいる
そのときまいた種は
まだ芽も出さず
眠っているだけかもしれないから