迷霧の連弾 40
期末テストが終わった
7月の始め
気の早いセミが
学校の裏山で
孤独に鳴いていた
梅雨の雨をたっぷりと受けて
背の高い草たちが
競うように伸び盛っている
先生の話では
これからは淋しい季節らしい
一年で最も
生命力の溢れる季節だから
言葉のまま受け止められない
理恵は先生に尋ねると
大きな草たちが成長すると
小さな草花は
埋もれてしまう
大きな野草は
その魅力もどこか大味なので
物足りないというのが
先生の言い分らしい
理恵はそうですねと
感心しながら
額に汗を浮かべて
まだ開けない梅雨の
束の間の青空に目を向けた
理恵の瞳がボクには
夏の青空を愛しげに
眺めているのではなく
何か秘められた
こころの苦しみを
青空に慰めてもらおうと
仰ぎ見ているような気がした
25/11/24 02:30更新 / 秋時雨