迷霧の連弾 32
先生が授業の終わりを告げると
生徒たちは今までずっと
息をしていなかったように
大きなため息を吐いて
校舎へと戻って行く
理恵は先生に
一礼してから
校舎へと向かった
理恵から少し遅れて
ボクも校舎へと向かった
理恵の斜め後ろを
ボクはついて歩く
合羽の音がガサガサと
やかましいと感じるほど
ボクたちは何も話さない
自転車置き場で
雨でずぶ濡れになった
合羽を脱いでいる時も
言葉はなかった
つい数分前までとは
理恵の纏う空気が
完全に入れ替わっていた
近づくことさえ許されない
そんな感情に
悩まされてもなお
なぜか理恵を
斜め後ろからついて歩いた
25/11/20 01:44更新 / 秋時雨