男は部屋にいた
閉じ込められていた
その部屋には何もない、灰色の暗く重たい雰囲気で小さな窓がひとつ、あるだけ

男はただひたすらに考えていた
何が違ったのか、どう間違えたのか。激しく自分を責めたりもした

そのときなにかが聞こえた

壁の向こうから　確かに

男は試しに拳の形で壁を軽く叩いてみた
さきほどより、強い音が返ってきた
男も更に力を込めて壁をノックした

また違う方向から音が聞こえた
またノックするとあらゆる方向から響くように色々な音が重なった

無音だった空間に音が生まれた
男は歓喜した

そうだ、右を向けと言われたって左を見てもいいんだ
数を順番通りに数えなくたっていいじゃないか
閉じ込められていたんじゃない

閉じ込めていたのは、
自分自身ー……

その瞬間、壁がひびわれた
亀裂は徐々に広がり、部屋は崩壊した
目の前に見えたのは真っ青な空だった

■作者メッセージ
高校生の時くらいに書いたものです
ぼんやり覚えたものに言葉をつけたので当時書いたものよりだいぶ長くなってます

青いですね