月と蝶
月下に蝶が飛んでいた。
濡れるように蒼く光っている。
この夢見のような情景を、
月読(つくよみ)は見出した。
そして、言う。
「そなたは何をしているのだ」
蝶は答える。
「星屑のもと、舞っているのです」
月読は蝶に言う。
「そなたの舞は胸に響く…
蝶よ、名は何と言うのだ」
「夜光(やこう)と申します」
暫し、言の葉が交わされたのちに、
月読は言う。
「…愉しいぞ、夜光よ。
月の中で舞を見せてくれ」
夜光は応じる。
「ええ。月の華として、
貴方に仕えましょう」
夜光は煌めきの鱗粉と共に
天へ昇り、
月読と溶けあっていった。
以来、月には夜光蝶が宿るという。