生きることは抵抗、これはあたしの話だけど
気を抜いているとうっかり死んでしまいそう
それでもいいよって言うと
あたしは夜に閉じ込められて
これまで抵抗していた激流に負けてしまう

真夜中の川、激流に体を奪われて
しょっぱい水をがぶがぶ飲んだ
そのうち足場がなくなっていることに気づいたあたしは
ここまで来ておいて、滝口でしがみついた
落ちることを望んでいたくせに

真下で揺れる墨汁みたいな滝壺に月光が反射している
ああ、恐ろしい
というよりは妙に心が落ち着いて
落ちてしまおうか、それとも抵抗しようか
なんて顔を濡らしながら悩んでいる

ここまで来ておいて、あたしは抵抗を選んだ
そういえば遺書を書くのを忘れてたとか
いい加減な言い訳で本心を隠しては
ずるずると脱出を図る


空を見上げると、かなり遠くだけど
黄金に輝くパンケーキみたいな月が見えた

夜の脱出口だ
かなり遠くだけど